これは直截的な物語ではない。
「Of Horses and Men(馬々と人間たちの)」という英語題が観客にこの映画を正しく伝えてくれることを願っている。抜けている単語「stories(いくつかの物語)」が鍵である。この北の地でももちろんmenはwomenを含むということも断っておこう。
この映画を作るために一頭の馬も傷つけなかったと述べることは重要である。エンドクレジットでもそう言っているが、これは本当に本当のことなのだ。キャストとスタッフは全員、馬の持ち主や馬を愛する者である。ひょっとすると、みんなの子供たちも手伝ってくれたかもしれない。
しかし、撮影中に神経症になってしまった人間の出演者たちがいたことを認めなければならない。これを書いている時点ではまだ彼らが生きていることがわかっているが。
ベネディクト・エルリングソンは、アイスランドが生んだ最も才能ある舞台演出家の一人である。演劇界のあらゆる賞に輝いているし、この10年間、彼のほとんどの舞台がソールドアウトとなり、異例のロングランを記録している。彼は2本の脚本・監督短編で映画作りの道に足を踏み入れ、映画という別の媒体でも才能を発揮できることを証明した。
ベネディクトの長編第1作『馬々と人間たち』は、人生、馬、そして人と馬との絆に対する彼の情熱を描いた作品である。この脚本には、ベネディクトの作品および彼独自の風変わりな語り口に見られる力と知性が投影されている。観客は、ダイナミズムと抒情と素晴らしいユーモアが絡まり合った魅惑的な関係の数々を強烈な体験として楽しめるだろう。
この映画の主人公は強くて美しい馬たちである。アイスランド馬は、このアート映画を商業的にアピールすることに貢献している。アイスランド馬は極度に純血が保たれた特別な品種であり、海外での人気は高まり続け、この品種のための特別なクラブの増加を見てもわかるとおり、ヨーロッパと北米で数々の世界選手権を制し、大きな勢力になっている。
1969年生まれ。アイスランドで最も成功している舞台演出家の一人。劇作家、俳優でもある。アイスランド国立劇場とレイキャヴィク市民劇場で多くの役を演じ、2002~04年にはレイキャヴィク市民劇場の実験演劇部門で芸術監督を務めた。
また、アイスランドの映画やTVドラマで俳優として活躍しているほか、デンマークのラース・フォン・トリアー監督の映画『Direktøren for det hele(The Boss of It All)』(06)にも出演。アイスランド・アカデミー賞(エッダ賞)に輝くTVシリーズ「Fóstbræður
(Blood Brothers)」(97~01)では脚本も手がけた。
自身の脚本による初監督短編『Thanks』(07)はニューヨークのBeFilm実験映画祭で審査員賞と観客賞を受賞。短編2作目『The Nail』(08)はクレルモン=フェラン国際短編映画祭でスペシャル・メンションを贈られ注目を浴びた。本作『馬々と人間たち』は長編監督デビュー作となる。
1953年、アイスランドのレイキャヴィク生まれ。多くの映画賞に輝くスカンディナヴィア屈指の監督、製作者。
短編やドキュメンタリーを撮った後、87年に長編監督デビュー。故郷を目指す二人の老人を描いた長編第2作『春にして君を想う』(91)は世界中で絶賛を浴び、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。その後の監督作に『ムービー・デイズ』(94)、永瀬正敏主演『コールド・フィーバー』(95)、『精霊の島』(96)、『エンジェル・オブ・ザ・ユニバース』(00)、『マンマ・ゴーゴー』(10)などがある。
1963年、アイスランドのレイキャヴィク生まれ。エッダ賞をたびたび受賞しているアイスランドの代表的俳優。2014年は本作で同賞の主演男優賞に輝くとともに、『Málmhaus(Metalhead)』(13)で助演男優賞も獲得した。主な出演作に、フリズリク・ソール・フリズリクソン監督の『精霊の島』(96)や『エンジェル・オブ・ザ・ユニバース』(00)、キャスリン・ビグロー監督『K-19』(02)、ソルヴェイグ・アンスパック監督『陽のあたる場所から』(03)、ジェラルド・バトラー主演『ベオウルフ』(05・DVD題)、オムニバス『8』(08)、イギリス映画『12時間 ダブル・ターゲット』(12・DVD題)など。最新作は、アイスランド出身のバルタザル・コルマキュル監督、キーラ・ナイトレイ、ロビン・ライト、ジェイク・ギレンホール共演『Everest』(15)。
1964年、デンマーク生まれ。スザンネ・ビア監督のデンマーク映画『Den eneste ene(The One and Only)』(99)などに出演した後、アイスランドの映画やTVドラマで活躍している。ベネディクト・エルリングソン監督の短編『Thanks』(07)と『The Nail』(08)のほか、エッダ賞6部門受賞作『Mávahlátur(The Seagull’s Laughter)』(01)などに出演。本作でアミアン国際映画祭最優秀女優賞を受賞し、エッダ賞主演女優賞にもノミネートされた。最新作は、イングヴァル・E・シグルズソンも出演するバルタザル・コルマキュル監督作『Everest』(15)。