チョン・ギョンホ インタビュー
東京国際映画祭のティーチインに参加されましたが、日本の観客の印象は?
韓国で上映した時よりも大勢の方が観に来て下さったので、本当に嬉しかったです。こういう場所に呼んで下さって感謝していますし、大変光栄に思っています。
この作品では1970年代の大学生を演じていますが、役作りはどのようにしましたか?何か参考にしたものはありますか?
普段は、役作りに役立つような本や映画などをよく見るほうなのですが、この映画に関しては特にそういう事はしませんでした。事前に監督とよく話し合って、役に近づけるよう努力しました。
具体的には、監督とどのような事を話し合ったのですか?
撮影に入る前は監督と頻繁に会って、映画についていろいろと話をしました。その時は「映画を撮る」というよりは「映画を楽しむ」感じでいこう、と話していたのですが、実際撮影が始まってみると難しくて…。特に私の場合はスヨンの役作りにあたって、1970年代という時代や社会的背景を理解する為、監督からいろいろ教わりました。
主演として、ほぼ全てのシーンに出ずっぱりで大変だったと思いますが、苦労した点はありますか?
主演だからというのではなく、脇役でもエキストラでも、自分の出るシーンになれば緊張するものです。特にこの作品では、私は物語全体を引っ張っていく役割を担っていたので、どうすればいい作品を作って、皆に観せることが出来るのかというプレッシャーをすごく感じていました。プレッシャーを乗り越える為にも集中して撮影に臨みました。
昨日のティーチインの際に「この映画は現代と過去が交差するファンタジーなので、どこか夢を見ているような、ボンヤリとした雰囲気や表情を保つのがすごく大変だった。」と仰っていましたが、映画の雰囲気に役作りがピタリと合っていて感心しました。
まさにそこが一番難しい演技でした。この映画はファンタジーやラブロマンスなどいろいろな要素が入り交じり、しかも現実、過去、未来を行き来するので、その中でずっと夢を見ているような雰囲気を保たなければいけないのが、演技で一番苦労した点です。
キム・ミンソンさん、チャ・スヨンさんなど、共演者の印象は?
実際の2人も、僕と同じく映画の役柄とは全く違う方たちです。キム・ミンソンさんはキャリアも長く、現場で(皆をリラックスさせようと)よく笑わせてくれたりと、非常に気配りのきくスマートな人です。撮影が終わってからも、よく会って話したりできる、とても頼りになる先輩です。スヨンさんも以前から知っていて、この前も一緒にドラマに出演しました。この2人と共演するのはとてもやりやすかったです。
ギョンホさんの演じたスヨンは、ちょっと屈折した所もある人物だと思うのですが、普段のギョンホさんと比べてかなり違いますか?
スヨンという人物は本当に純粋な愛を求めた人で、その結果スジという素晴らしい人と出逢う事ができましたが、愛に対する理想を持っている面では私と通じる所があるかもしれません。でも私は恋愛の経験が乏しくて、よくわからないのですが…(笑)。
そういう所は想像しながら演じていたということでしょうか(笑)。
スヨンのような一途な恋は辛そうですね。監督は、これは実際に自分が経験した事だと言うのですが、それはどう考えても嘘のようです(笑)。
日本の観客に、特に観て欲しいなと思う点はありますか?
この映画は一瞬でも目をそらすとストーリーがわからなくなるので、最初から最後まで大事に観て頂きたいのですが、なかでも夢から覚めてスジに出逢う、あるいはピッピと出逢う、といった人間関係がからんでくる場面はとりわけ注意深く観て頂ければと思います。
ギョンホさんが好きな、あるいは影響を受けた作品や俳優は?
韓国の俳優なので、自国の映画はほとんど見ます。なので韓国映画全体から影響を受けていると言っていいのですが、特にハン・ソッキュさんやソン・ガンホさんのような素晴らしい俳優になりたいと思っています。そして、自分が演技するうえで学ぶ事が多いと思う俳優はトニー・レオンさん。彼の悲しみをたたえた目が非常に好きです。日本の俳優では妻夫木聡さんが好きです。
今後ギョンホさんがチャレンジしてみたい作品や、役柄はありますか?
やっていない役柄が非常に多いので、どんな役でも挑戦してみたいのですが、今一番チャレンジしたいのは、本当に悲しい恋物語。次の作品がおそらくそうした恋の話になると思います。
次回作について、差し支えない部分で何か教えて頂けますか?
今言った悲しい恋物語というのは次の次の作品の話で、まだ良くわからないのです。次回作は来月から撮影が始まるのですが、こちらは『王の男』のイ・ジュンイク監督の新作で、バンドの話です。
(2007年10月22日東京・六本木にて)
協力:東京国際映画祭