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BOOK GUIDE

BOOK GUIDE

『私はあなたのニグロではない』を
もっと楽しむための
熱烈ブックガイド!

柴田元幸さん(アメリカ文学研究者 翻訳家)

地図になかった世界』

エドワード・P・ジョーンズ 著 小澤英実 訳
白水社 3,000円+税

南北戦争前のヴァージニアで、自由になった黒人が他の黒人を奴隷として所有していたという史実を元に、奴隷制、人種差別の歴史から壮大な物語を紡ぎ出した大傑作。僕の狭い読書範囲では、2000年代にアメリカで書かれた最高の小説。

金原瑞人さん(法政大学教授 翻訳家)

ただの黒人であることの重み』

ニール・ホール 著 大森 一輝 訳
彩流社 1,000円+税

大量のサメが動き回る/海ではなく陸で/だから海に向かって難民が逃げる」「私たちの子どもは/戦争が連れ去るのではない/私たちが行かせるのだ/国旗や国歌やスローガンのもとへ」

都甲幸治さん(翻訳家 早稲田大学文学学術院教授)

アメリカの奴隷制を生きる』

フレデリック・ダグラス 著 樋口映美 監修
専修大学文学部歴史学科南北アメリカ史研究会 訳
彩流社 1,800円+税

奴隷制がどれほど残忍なものかが、ダグラスの手記を読むと感覚的によく分かる。敵対的な世界で味方を作りながら生き延びていく彼の知性と勇気が圧巻。

新田啓子さん(アメリカ文学研究者 立教大学教授)

コーネル・ウェストが語るブ
ラック・アメリカ 現代を照らし
出す6つの魂』

コーネル・ウェスト 著
クリスタ・ブッシェンドルフ 編 秋元由紀 訳
白水社 2,400円+税

現代アメリカ屈指のパブリック・インテレクチュアルである著者が説き起こす黒人思想の歴史とアクチュアリティ。「預言者」的黒人指導者6人のヴィジョンを知れば、ボールドウィンの個性がより深く理解できるだろう。

世界と僕のあいだに』

タナハシ・コーツ 著 池田年穂 訳
慶應義塾大学出版会 2,400円+税

美しき闘争』

タナハシ・コーツ 著 奥田暁代 訳
慶應義塾出版会 2,700円+税

著者コーツは自他ともに認める「ボールドウィンの後継者」であり、その文筆によるアクティヴィズムへの評価は高い。『世界と僕のあいだに』は2015年の全米図書賞を受賞したアメリカ社会論であり、『美しき闘争』はそれにさかのぼる2008年に初版された彼の父の回想録。白人が捏造した「ニグロ像」とは何か、黒人の生を否認する権力とは何か、1980年より後に生まれた人々にもわかりやすい文脈で語られている。

地下鉄道』

コルソン・ホワイトヘッド 著 谷崎由依 訳
早川書房 2,484円(税込)

20世紀最大の黒人小説家ボールドウィンの死から30年、最先端の黒人文学として、2017年のピュリッツァー賞など様々な賞に輝いたこの小説を薦めたい。逃亡奴隷救済のネットワークを暗に意味した「地下鉄道」を、奴隷を逃すため地下に張り巡らされた本当の鉄道網として描いた歴史改変小説。

『悪魔が映画を作った』

ジェームズ・ボールドウィン 著 山田宏一 訳
時事通信社 ※絶版につき「日本の古本屋」で検索!

ハリウッド映画の人種表象を通してなされたボールドウィンのアメリカ文明批判。彼は「何を見て育ったか」が人間を形成するという信念をもっていたが、その知見は『私はあなたのニグロではない』の構想にも生かされている。

藤永康政さん(アメリカ黒人史家 日本女子大学准教授)

モハメド・アリとその時代 グローバル・ヒーローの肖像』

マイク・マークシー著 藤永康政 訳
未來社 2,800円+税

私はあなたのニグロではない』は単なる黒人のストーリーではない。「人種」とは、生物学的な人間の種別のことではなく、人々が創りあげた観念である、このことを理解せずしてボールドウィンの苦悩を知ることはできない。本書は、モハメド・アリという類いまれなヒーローの生涯を通じて、「観念としての黒人」の歴史をよく伝え、豊富な訳注は、20世紀のアメリカ社会や文政治、そして文化を理解するのに役立つ。

ピーター・バラカンさん(ブロードキャスター)

完訳マルコムX自伝 (上/下)』

マルコムX 著 浜本武雄 訳
中公文庫—BIBLIO20世紀 上下巻 各1,143円+税

レイシズムの実態を怒りながらも終始クールに、反論できない論理で説いた傑作です。







長谷川町蔵さん(コラムニスト 小説家)

MARCH 1 非暴力の闘い』

ジョン・ルイス、アンドリュー・アイディン 作 ネイト・パウエル 画 押野素子 訳
岩波書店 1,900円+税

マーティン・ルーサー・キングの盟友だった現民主党下院議員が、公民権運動時代の思い出と戦いを振り返った自伝グラフィック・ノベル。どんなコミックの登場人物よりもヒーローっぽいけど、これは史実なのだ。

月永理絵さん(エディター&ライター)

サーク・オン・サーク』

ダグラス・サーク 著 ジョン・ハリディ 編 明石正政 訳 INFASパブリケーションズ 3,086円(税込)

せっかくなので映画関連の書籍を紹介したい。本書は、『悲しみは空の彼方に』(59)の監督ダグラス・サークのインタビュー集。『悲しみは空の彼方に』は、『私はあなたのニグロではない』で抜粋引用されていた『模倣の人生』(34)のリメイク作品。黒人の母を恥じる娘は、自分の人生から逃避し、白人女性としての「模倣の人生」に身を隠す。サークは自作について「「ブラック・イズ・ビューティフル」のスローガンが出現する前の黒人の状況を描いた映画」と語っている。

評伝『ジーン・セバーグ』

ギャリー・マッギー 著 石崎一樹 訳
水声社 ※絶版につき「日本の古本屋」で検索!

一時期、マルコムXが組織するブラックパンサー党の活動に共鳴し、資金援助をするなどしていた女優ジーン・セバーグ。だがこれを理由にFBIのブラックリストに載り、本人も徐々に精神を崩していく。『勝手にしやがれ』(59)のヒロインの、知られざる一面を紹介した一冊。

渡辺靖さん(アメリカ研究学者、文化人類学者、慶應義塾大学SFC教授)

アメリカ市民権運動の歴史 連鎖する地域闘争と合衆国社会」

川島正樹 著
名古屋大学出版会 9,500円+税

黒人の市民権獲得の歴史を最も包括的に描いた決定版ともいえる名著。

増田ユリヤさん(ジャーナリスト)

アメリカ黒人の歴史』

ジェームズ・M・バーダマン 著 森本豊富 訳
NHKブックス 1,296円(税込)

タイトル通り、黒人の歴史と映画に出てくる事件などについて基本的なことがわかる内容。

黒人差別とアメリカ公民権運動』—名もなき人々の戦いの記録

ジェームズ・M・バーダマン 著 水谷八也 訳
集英社新書 700円+税

一冊目と同じ著者。新書なので内容を絞り、より読みやすくしている。

キング牧師とマルコムX』

上坂昇 著
講談社現代新書 800円+税

対照的なふたりの黒人指導者。その考え方の違いはどこにあるのか。ふたりの思想はどのように近づいていったのか、今なぜこのふたりが注目されるのかを理解するのに役立つ。

魂をゆさぶる歌に出会う—アメリカ黒人文化のルーツへ』

ウェルズ恵子 著
岩波ジュニア新書 820円+税

アメリカにおける黒人の歴史を、ヒップホップやラップ、バスケットボールやゴスペルソング、「腰パン」などを例に、奴隷制度や人種差別といった残酷な歴史の中を生き抜いてきた人々の知恵や文化にスポットを当てて語られたもの

宇野維正さん(映画・音楽ジャーナリスト)

NAS イルマティック』

マシュー・ガスタイガー 著 押野素子 訳 高橋芳朗 監修
スモール出版 1,800円+税

ヒップホップを「公民権運動後にブラック・コミュニティから誕生した最初のメジャーな音楽」と位置づけ、その歴史の分岐点となった超重要作について徹底的に論じた一冊。ジェームズ・ボールドウィンからケンドリック・ラマーへと繋がる一つの補助線。

丸屋九兵衛さん(bmr)

黒い皮膚・白い仮面』

フランツ・ファノン 著 海老坂武・加藤晴久 訳
みすず書房 3,400円+税

ボールドウィンより1年後に、しかし、カリブ海のフランス領マルティニーク島に生まれた黒人精神科医フランツ・ファノンもまた、無自覚な白人至上主義に慣れきった白人と黒人、両方の脳髄を切り刻み続けた哲人であった。

ジェームズ・ボールドウィンの本

アメリカ短編ベスト10』

平石貴樹 編訳
松柏社 1,944円(税込)

ジェームズ・ボールドウィンの代表的短編小説「サニーのブルース」を収録。主人公の「私」と、弟でジャズミュージシャンのサニーの物語。ラストのジャズセッション場面描写がすばらしく圧巻!!はじめてボールドウィンを読むのにおすすめの一編。

ボールドウィンの書籍は
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