近年『ひつじ村の兄弟』、『好きにならずにいられない』、『馬々と人間たち』など国際映画祭で高い評価を得ているアイスランド映画。本作のグズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督も、この初長編作品が各国の映画祭で絶賛され受賞を重ね続ける若き俊英。
『ハートストーン』は、アイスランドの美しく雄大で閑雅な自然が広がる漁村を舞台に、少年たちの儚く繊細な感情を残酷なまでに切り取った、監督の自伝的“ラブストーリー”。人口33万人の小さい島国が新たな才能をまた輩出した!
アイスランド語の題名『Hjartasteinn』の直訳。グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督が「Heart(ハート)」と「Stone(ストーン)」という2つの単語を1語に合わせて作った造語である。それぞれの単語は、〝温かい感情”と〝厳しい環境”を意味しており、監督はこの新しい言葉が詩的な形でこの映画にとても良くフィットすると感じ、タイトルを『ハートストーン』に決めた。
『ハートストーン』のストーリーは私自身が幼い頃に過ごした漁村での経験が元になっています。2人の少年の美しく力強い友情を主題に、彼らの置かれた環境と心の葛藤から別離を経て、強い絆によって再会するまでを描きました。
脚本のヒントを探していた数年前、10代で自らの命を絶った幼馴染みの少年の夢を見ました。夢の中で彼は私たちが過ごした村を一緒に歩いて見せてくれ、そして彼の古い家の前に着くと微笑みながら私に村の地図を手渡すのです。そのあと私たちは走り出し、他の友人たちと遊びました。夢から覚めた時、その時代のことを作品にしようと思いました。
この漁村は季節により環境が一変します。夏は休みなく太陽が降り注ぐのに、冬はほとんど日が差しません。自分を自由にしてくれる大切な何かが、次には自分を縛り苦しめるものになる。動物たちが身近にあり、大自然と人間が驚くほどに美しく、同時に信じられないほど残酷になることを知らされる、そんな村です。
少年時代の私は、自分の見ている世界がどんなものなのかを周囲の大人たちに見せることができたらいいのにといつも思っていました。その強烈な思いは私が映画人となった今、目標へと変わりました。少年時代の経験というのは人生にとても明確に、美しく、そして厳しい形で影響を与えるんですね。作品のインスピレーションは自然の中で見つけます。山や海辺、手付かずの大地を歩いている時に強く感じるもの。深層心理の動きがそれを教えてくれます。
友情、自分を受け入れること、女性の力強さ、そして家族の大切さについて…この映画がすべての人に、特に若い人たちに大切なメッセージを届けてくれると確信しています。
1982年アイスランド生まれ
アイスランド芸術アカデミーを卒業後、デンマークで脚本を学ぶ。製作した短編は200以上の映画祭で上映され、50を超える国際賞を受賞。2013年の『クジラの谷(原題:Whale Valley)』はカンヌ国際映画祭短編部門で特別表彰、ヨーロッパ映画賞で短編作品賞にノミネート。初の長編となる『ハートストーン』をカンヌ国際映画祭設立のシネフォンダシオン・レジデンス参加中に執筆、オランダ映画祭共同製作プラットフォームより受賞。