ノルウェー北部の田園地方。この土地の牧師館で静かに暮らす、ヴィクトルとエヴァ夫妻。
エヴァは7年も会わなかった母シャルロッテを、牧師館に招くことを思いつく。国際的なピアニストとしてきらびやかな人生を送ってきた母が、つい最近長年連れ添った恋人を亡くしたことを、風のうわさで聞いたばかりであった。
シャルロッテは、自ら豪華な車を運転してやってきた。背骨が痛いと愚痴をこぼしながらも、相変わらず若々しく華やいた雰囲気のシャルロッテ。ふたりは抱擁をかわし、お互いの近況を話し合う。エヴァへの愛情を示していたシャルロッテだが、もうひとりの娘であり、脳性麻痺を患うヘレナが一緒に暮らしていると聞き、一転して苛立ちをあらわにする。だが、ヘレナの前では、耳障りのよい愛の言葉を口にし、腕に巻いていた時計を外してヘレナに与えるのだった。
エヴァとシャルロッテは、お互いの感情が7年前といささかも変わっていないことに、すでに気づいていた。夕食後、母の誘いに応じてショパンのプレリュードを弾くエヴァ。エヴァの弾き方を厳しく批評し、解釈を語って聞かせるシャルロッテの横顔を、エヴァは複雑な表情で見つめる。その後、シャルロッテが散歩に誘おうとすると、エヴァはひとり、4歳になる前に亡くした息子エリックの部屋で物思いにふけっていた。娘の様子を不審に思い、問いかけるシャルロッテに、ヴィクトルは息子の事件が起こる前後のエヴァとの生活を語る。
夜更け、眠れぬエヴァはワインの酔いにまかせ、シャルロッテに幼い頃から抱き続けた憤怒を洗いざらいぶちまける。自分と父を置いて、演奏旅行に出かけ、新しい恋に走った母。キャリアが行き詰まると家に戻り、自分を玩具のように、意のままに操った母。エヴァには18歳のとき無理やり堕胎させられた経験もあった。エヴァの容赦ない糾弾の前に、シャルロッテもまた、自分の本心を露わにしていくー。